なぜ「何から」で手が止まるのか
新患を増やしたい院長に、やり方のアイデアが足りないことはほとんどありません。足りないのは、たくさんある手段を並べる順番です。チラシ、ホームページ、SNS、ポスティング、地図検索、インターネット広告。どれも「やったほうがいい」と聞くので、全部に少しずつ手を出して、どれも形にならないまま月末が来ます。
背景には、施術所の数の多さがあります。柔道整復の施術所は全国で50,919か所あり、前の集計から1.1%増えました(厚生労働省・令和4年末)。近所にも駅前にも整骨院がある状態で、ただ看板を出して待っているだけでは、その他大勢に埋もれます。だからこそ、限られたお金と時間を、効くものから順に振り向ける必要があります。
この記事は、手段を一つずつ足していくのではなく、先に順番を決めます。お金がかからず、効き始めが早く、やめても消えないものを先に。お金がかかり、やめると流入が止まるものを後に。この並びで考えると、最初の一手は自然に決まります。
集客の前に、一つだけ決める
手段に入る前に、決めておくことが一つあります。誰に、どこから来てほしいかです。整骨院に通うのは、多くが院の近くに住むか働く人です。遠くまで広く知らせるより、近くで困っている人に見つけてもらうほうが、かける労力に対して来院につながります。
具体的には、院から無理なく通える範囲を地図で引き、よく来る悩みを一つ思い浮かべます。腰の痛み、肩こり、交通事故のあとの通院、産後の体の不調など、自院がいちばん力になれるものです。この「近くの・この悩みの人」が決まると、次に整える地図検索や口コミで、何を書き、どんな写真を載せるかが定まります。誰にでも当てはまる説明は、結局だれの心にも残りません。
手をつける順番は「お金のかからない順」
手段を並べる物差しは三つです。かかる費用、効き始めの早さ、そしてやめたあとに残るかどうか。この三つで見ると、最初にやることはお金のかからない順に決まります。下の表は、おもな集客手段をこの物差しで並べたものです。
| 手段 | 費用 | 効き始め | 最初に手をつけるか |
|---|---|---|---|
| Googleビジネスプロフィール | 無料 | 早い | ◎ まず最初に |
| 口コミを集める仕組み | 無料 | 少しずつ | ◎ 早めに |
| 再来(リピート)の声かけ | 無料 | 早い | ◎ 早めに |
| ホームページ | 中 | 中 | ○ 次に |
| LINE公式アカウント | 低 | 中 | ○ 次に |
| チラシ・ポスティング | 中〜高 | 配った時だけ | △ あとで |
| インターネット広告 | 高(毎月続く) | 早いが止めると消える | △ あとで |
費用と効き始めは目安です。広告は出している間だけ流入があり、無料の手段は積み上がって残ります。この差が、着手する順番を決めます。
順番にすると、保有(自院ですぐ直せるもの)から始め、評判(口コミと再来)を育て、足りない分を広告で買う、という流れになります。お金をかける広告は、土台ができてから最後に足すと、同じ費用でも残るものが変わります。
まずGoogleビジネスプロフィール(地図で見つかる土台)
最初の一手は、Googleビジネスプロフィールです。地図やインターネットの検索で「整骨院 地名」「近くの整骨院」と探されたときに、地図の上に院の情報を出すしくみで、登録も更新も無料です。痛みを抱えた人が今すぐ通える院を探す瞬間に、まっさきに見られる場所になります。
地図での表示の出やすさは、Googleの説明では関連性・距離・知名度の三つで決まります(Googleビジネスプロフィール ヘルプ)。関連性は院の情報がどれだけ探している内容に合っているか、距離は検索した場所からの近さ、知名度は院がどれだけ知られているかです。近さは動かせませんが、関連性と知名度は、情報の埋め方と口コミで自分で上げられます。
今週やることは多くありません。院名・住所・診療時間・電話を正しく登録し、院の外観・中・施術の様子の写真を載せ、自院が力になれる悩みを説明文に書きます。登録して終わりにせず、診療時間の変更やお知らせをこまめに直すと、Googleからも見られている院として扱われやすくなります。
次に口コミと再来(広告より先に効く)
地図に出るようになったら、次は口コミです。同じように地図に並んだ院の中から、最後にどこへ行くかを決めるとき、患者が見るのは口コミの数と中身です。広告にお金を払う前に、ここを整えるほうが、選ばれる確率が上がります。
口コミは「お願いする流れ」を仕組みにする
口コミは待っていても増えません。施術を終えて満足してもらえた患者に、その場で一言お願いする動作を、会計や見送りの流れに組み込みます。スマホで開ける案内を会計時に渡す、施術後の声かけの言葉を決めておく、といった形です。謝礼で口コミを買ったり、自分で書いたりするのはGoogleの規約に反し、消される危険があるので避けます。正直に集めた口コミだけが、長く残って効きます。
再来は、新患より手間も費用も小さい
新しい人を一から集めるより、一度来た患者にもう一度来てもらうほうが、かかる手間も費用も小さく済みます。次の来院の目安を施術の最後に伝える、次回の予約をその場で取る、しばらく空いた患者にお知らせを送る。この当たり前の声かけを続けるだけで、広告を増やさなくても来院は安定します。集客というと新患ばかりに目が向きますが、足元の再来を固めるほうが先です。
チラシと広告は最後でいい
チラシもインターネット広告も、効かないわけではありません。早く反応が出ることもあります。ただ、どちらもお金を払っている間だけの集客で、止めた月に流入はもとに戻ります。地図で見つかる状態と口コミという土台がないまま広告費を足すと、その月だけ人が来て、やめると何も残りません。
順番として、チラシと広告は土台ができてから、足りない分を補うために使います。新規開業の認知づくりや、特定のキャンペーンを知らせたいときなど、目的を絞れば値打ちがあります。下に、今週やることと、まだやらないことを分けておきます。
今やる
- 院から通える範囲と、自院がいちばん力になれる悩みを一つ決める。
- Googleビジネスプロフィールを登録し、写真・診療時間・説明文の空欄を埋める。
- 施術後に口コミを一言お願いする流れと、言葉を決める。
- 次回の来院や予約を、施術の最後に必ず伝える形にする。
まだやらない
- 土台のないうちのチラシの大量配布やポスティング。
- 地図と口コミを整える前のインターネット広告の出稿。
- あれもこれもと、複数の手段に同時に手を広げること。
- 誰にでも当てはまる、ぼやけた宣伝文句づくり。
新患が増えないのは、手段が足りないせいではありません。順番が定まっていないだけです。お金のかからない土台から始め、評判を育て、足りない分だけを広告で補う。この順で一つずつ進めれば、限られた予算でも、来院は少しずつ積み上がっていきます。
よくある質問
出典
- 厚生労働省「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(柔道整復の施術所数 50,919か所、就業柔道整復師 78,827人、令和4年末) mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/22/ (2026年6月確認)
- Googleビジネスプロフィール ヘルプ「ローカル検索結果の掲載順位を改善する」(関連性・距離・知名度の3要素) support.google.com/business/answer/7091 (2026年6月確認)
本記事は、公表された統計とGoogleの公式の説明をもとにまとめたものです。集客の成果は地域や院の状況で変わります。具体的な広告の出稿判断は、最新の各サービスの案内も合わせてご確認ください。