2店舗目は、売上の前に判断軸を見る

1院目が回り出すと、2店舗目で売上をもう一段伸ばす絵が見えてきます。ただ、2院目を出した分だけ売上が積み上がる、とは限りません。新しい院は、患者がつくまで時間がかかる一方、家賃と人件費は初日から毎月出ていきます。売上の伸びを根拠に出すと、この時間差で資金が苦しくなりがちです。

だから、出すかどうかは、売上の勢いより先に三つの判断軸で確かめます。1院目が自分なしで回るか、2院目を任せられる院長候補がいるか、お金と数字を見える化できているか。この三つが整わないうちに出すと、自分が2院を行き来して、どちらも中途半端になります。人と仕組みが先です。順に見ます。

1院目が、自分なしで回るか

最初に確かめるのは、1院目が自分なしで回るかです。院長である自分が現場の主力のままだと、2院目に時間を割いた瞬間、1院目の売上と現場が落ちます。2店舗目は、1院目が自分の手を離れて回ることが前提になります。

目安は、自分が数日から1週間ほど現場を離れても、売上と患者対応が保てるかです。新患の対応、保険の事務、スタッフのシフトが、自分がいなくても止まらない状態かを見ます。ここがまだなら、2院目より先に、1院目を自分なしで回る形に整えるのが順番です。1院目が回らないまま2院目を出すと、自分の手が2倍に割れるだけで、両院とも弱くなります。

任せられる院長候補がいるか

次に、2院目を任せられる院長候補がいるかです。多くの場合、ここが一番の制約になります。物件もお金も用意できても、2院目を任せる人がいなければ、自分が両院を行き来し続けることになります。それは、規模を広げたつもりで、自分の働く時間を増やしているだけになりがちです。

院長候補は、施術の腕だけでなく、現場をまとめ、患者とスタッフを見られる人かで考えます。今いるスタッフから育てるなら、2院目の話より前から、任せる範囲を少しずつ渡して育てておきます。外から採るにも、有資格者と施術所が増えていて、人の採用は楽ではありません。「出すと決めてから探す」より、「任せられる人ができたから出す」の順が安全です。

資金と数字を、見える化できているか

三つ目は、お金と数字の仕組みです。2院になると、どちらの院がいくら売り上げ、経費がいくらで、患者が何人来ているかを、別々に把握する必要があります。1院のときは自分の感覚で回せても、2院を感覚だけで管理するのは難しくなります。

確かめるのは、各院の売上・経費・患者数・自費と保険の割合を、月ごとに見える形にできているかです。どの数字を見ればいいかは関連記事で扱いますが、これが1院目でできていないなら、2院目を出す前に整えます。数字が見えないまま2院に増やすと、どちらかが沈んでいても気づくのが遅れます。資金の調達は、内訳で見積もったうえで、日本政策金融公庫などの公的な窓口や金融機関に相談します。

2店舗目にも届出が要る。施術所ごとに手続きする 開設届は施術所ごとに必要です。2店舗目を開設したら、開設後10日以内に、その施術所の所在地の都道府県知事へ届け出ます。窓口は保健所です。療養費を受領委任で扱うなら、地方厚生局への申し出と登録も施術所ごとに要ります。1院目で済んでいても、2院目はあらためて手続きをします。資金の条件は公庫や金融機関に、届出の詳細は保健所や地方厚生局に確認します。

出すと増える固定費と手間

2店舗目を出すと、増えるものがあります。一つは固定費です。新しい物件の家賃、スタッフの人件費が、患者がつく前から毎月かかります。患者がつくまでの数か月を、1院目の利益と運転資金で支えられるかを、出す前に見ておきます。

もう一つは、管理の手間です。2院ぶんのシフト、経理、在庫、教育を見ることになり、自分が両院を行き来する時間も増えます。とくに気をつけたいのは、2院目に手をかけるあまり、1院目が手薄になることです。1院目はそれまでの売上を支える土台なので、ここが崩れると2院目を出した意味が薄れます。固定費と手間の両方が増えても、1院目を保ったまま回せるかが、出すかどうかの分かれ目です。

先にやること/まだやらないこと

2店舗目を考え始めたら、判断軸に沿って、今やることと、まだやらないことを分けます。

先にやる

  • 1院目を、自分が数日離れても売上と現場が保てる形に整える。
  • 2院目を任せられる院長候補を、今いるスタッフから育てるか、採用を始める。
  • 各院の売上・経費・患者数を月ごとに見える化し、2院ぶんを管理できる形にする。
  • 2院目の資金を内訳で見積もり、公庫や金融機関に調達と条件を相談する。

まだやらない

  • 売上が伸びている勢いだけで、物件を決めて契約すること。
  • 任せられる院長候補がいないまま、出す日取りを先に決めること。
  • 1院目の数字が見えていないまま、2院目に進むこと。

2店舗目は、売上を伸ばす手段に見えますが、整っていないうちに出すと、自分の手間と固定費が増えるだけになります。1院目が自分なしで回り、任せられる院長候補がいて、数字が見える。この三つが整ってから出せば、2院目は土台の上で動きます。人と仕組みが先で、勢いで出さない。届出は施術所ごとに保健所へ、資金は公庫や金融機関に確認します。

よくある質問

接骨院の2店舗目は、いつ出せばいいですか?
売上が伸びているからという理由だけで決めないほうが安全です。先に確かめるのは人と仕組みです。1院目が自分が現場に立たなくても回るか、任せられる院長候補がいるか、お金と数字を見える化できているか。この三つが整っていないうちに出すと、自分が2院を行き来して両方が手薄になります。出すかどうかは、売上の勢いより、この判断軸が整ったかで決めます。
2店舗目を出す前に、何を確かめればいいですか?
三つあります。一つ目は、1院目が自分なしで回るか。自分が休んでも売上と現場が保てるかを確かめます。二つ目は、2院目を任せられる院長候補がいるか。多くの場合、ここが一番の制約になります。三つ目は、資金と数字の仕組み。各院の売上や経費、患者数を見える化できているかです。この三つが整わないうちは、まだ出す時ではないと考えます。
2店舗目を出すと、何が増えますか?
固定費と管理の手間が増えます。新しい物件の家賃、スタッフの人件費が、患者がつく前から毎月かかります。さらに、2院ぶんのシフト、経理、在庫、教育を見る手間が加わります。自分が両院を行き来する時間も増え、1院目が手薄になりがちです。出す前に、2院目の家賃と人件費が数か月続いても1院目で支えられるか、運転資金を含めて見ておきます。
2店舗目の資金は、どこに相談すればいいですか?
日本政策金融公庫などの公的な窓口や、取引のある金融機関に相談します。2店舗目の資金は、物件取得、内装、施術機器、広告に加えて、患者がつくまでの運転資金が要ります。金額は立地や規模で変わるので、相場をうのみにせず内訳で見積もります。いくら借りられるか、自己資金をどれくらい用意すべきかといった条件は、公庫や金融機関に確認します。
2店舗目にも、開設届は必要ですか?
必要です。施術所ごとに届出が要るので、2店舗目を開設したら、開設後10日以内に、その施術所の所在地の都道府県知事へ届け出ます。窓口は保健所です。療養費を受領委任で扱うなら、開設届とは別に、地方厚生局への申し出と登録も施術所ごとに要ります。1院目で済んでいても、2院目はあらためて手続きをします。詳細は保健所や地方厚生局に確認します。

出典

SOURCES | 一次情報
  1. 日本政策金融公庫(政府系金融機関・新規開業資金。2店舗目の資金調達・条件の相談先) jfc.go.jp (2026年6月確認)
  2. 柔道整復師法(昭和45年法律第19号)第19条(施術所の届出=開設後10日以内に施術所所在地の都道府県知事へ届出。施術所ごとに必要) laws.e-gov.go.jp/law/345AC1000000019 (2026年6月確認)
  3. 厚生労働省 衛生行政報告例(施術所数。有資格者と施術所が増えている=採用と競争の背景) mhlw.go.jp/toukei/list/36-19.html (2026年6月確認)

本記事は、2店舗目を出すかどうかの判断軸を整理したものです。届出の期限・窓口や、資金の要件は変わることがあります。資金の調達や条件は日本政策金融公庫や金融機関に、届出は保健所や地方厚生局に確認してください。開業資金の金額は出典により幅があり、特定の金額や売上の増加を保証するものではありません。

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