開業は「やる順番」を先に決める
開業準備でつまずくのは、物件や内装といった目に見えるものから動いてしまうからです。先に物件を借りると、家賃が発生したまま準備が進み、内装にお金をかけすぎて運転資金が薄くなります。届出の期限も、開業日が決まってから慌てて追いかけることになります。
だから、順番を先に決めます。お金の計画を立てる、立地を決める、届出を出す、人を雇うなら手続きをする。この順です。資格は前提で、柔道整復師の免許があることから始まります。順番が決まると、いつ何をするかが見えて、抜けと出費の取りこぼしが減ります。順に確かめます。
資金の計画を、内訳で立てる
最初に立てるのは、お金の計画です。ここで気をつけたいのは、開業資金の「相場」の数字を当てにしないことです。開業資金の金額は、出典によって幅が大きく、立地や規模、居抜きか新装かでも変わります。特定の金額をうのみにせず、自分の計画に当てて内訳で見積もります。
内訳は、物件取得、内装の工事、施術機器や備品、広告、そして数か月分の運転資金に分かれます。とくに運転資金は、患者がつくまでの数か月を支える分として、多めに見ておきます。資金の調達は、日本政策金融公庫などの公的な窓口や、金融機関に相談します。自己資金を総事業費の一定割合用意しておくのが一般的ですが、いくら必要かや借りられる条件は、公庫や金融機関に確認します。
立地と物件を決める
お金の見通しが立ったら、立地と物件を決めます。立地の選び方は別の記事で詳しく扱いますが、ここで一つ押さえておきたいのは、施術所には構造設備の決まりがあることです。施術室の広さや換気、消毒の設備などについて、柔道整復師法の施行規則に基準があり、保健所が確認します。
だから、物件を契約する前に、その物件で基準を満たせるかを確かめます。契約してから基準に足りないと分かると、追加の工事費がかかったり、開設の届出が通らなかったりします。気になる物件が出たら、契約の前に、管轄の保健所に図面を持って事前相談に行くと、後戻りを防げます。
届出 開設届・受領委任・税務署
物件と開業日が決まったら、届出です。届出には期限があり、窓口も複数に分かれます。大きく三つあります。
開設届(保健所)
施術所を開設したら、開設後10日以内に、施術所の所在地の都道府県知事へ届け出ます。窓口は保健所です。柔道整復師法で定められた届出で、所在地や従事する柔道整復師の氏名などを届け出ます。届出をしないまま業を続けると、罰則の対象になることがあります。
受領委任(地方厚生局)
療養費を受領委任で扱うなら、開設届とは別に、地方厚生局へ受領委任の申し出と登録が要ります。開設届は保健所、受領委任は地方厚生局と、窓口も手続きも別です。保険を扱う予定なら、この登録も段取りに入れます。
税務署(開業届・青色申告)
税務署には、開業届を開業から1か月以内に出します。あわせて、青色申告で確定申告をするなら、青色申告承認申請書を出します。期限は、その年の1月16日以降に開業した場合は開業から2か月以内です。書式は国税庁のサイトから入手できます。
人を雇うなら、労務は社労士に
一人で始めるなら人の手続きは要りませんが、スタッフや受付を雇うなら、労働と社会保険の手続きが加わります。労働保険、社会保険、雇用の手続きなど、窓口は労働基準監督署や年金事務所、ハローワークに分かれます。
ここは、自分で抱え込まず、社会保険労務士に確認するのが確かです。労働時間をきちんと記録すること、年5日の有給を取らせること、常時10人以上なら就業規則を作って届け出ることなど、雇う側の決まりは細かく、後から問題になりやすいところです。採用や定着の進め方は別の記事で扱います。手続きの面は、開業の段取りに「社労士に相談」を一つ入れておきます。
開業30日でやること
開業が近づいたら、順番に沿って、抜けがないか確かめます。
先にやる
- 資金の計画を内訳で立て、足りない分の調達を公庫や金融機関に相談する。
- 物件は契約の前に、保健所へ事前相談して構造設備の基準を確かめる。
- 開設届(保健所・10日以内)、受領委任(地方厚生局)、税務署(開業届・青色申告)の期限と窓口を一覧にする。
まだやらない
- 相場の数字だけを当てにして、資金計画を立てること。
- 保健所への事前相談をせずに、物件を契約すること。
- 税や労務の判断を、自分の解釈だけで進めること。税理士・社労士に確認する。
開業は、やることが多く見えますが、順番が決まれば一つずつ片づきます。お金の計画を内訳で立て、物件は保健所に相談してから契約し、届出は窓口と期限を一覧で管理する。税と労務は専門家に確認する。この順で動けば、抜けと出費の取りこぼしを防げます。資金・立地・採用は、それぞれ関連記事で詳しく扱います。
よくある質問
出典
- 柔道整復師法(昭和45年法律第19号)第19条(施術所の届出=開設後10日以内に施術所所在地の都道府県知事へ届出、変更・休止・廃止も同様) laws.e-gov.go.jp/law/345AC1000000019 (2026年6月確認)
- 国税庁「開業する場合」(個人事業の開業届出は開業から1か月以内)・所得税の青色申告承認申請手続(1月16日以降開業は開業から2か月以内) nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/42.htm (2026年6月確認)
- 日本政策金融公庫(政府系金融機関・新規開業資金。開業資金の調達相談) jfc.go.jp (2026年6月確認)
本記事は、開業の段取りを整理したものです。届出の期限・窓口や、資金・税・労務の要件は変わることがあります。実際の手続きは、保健所、地方厚生局、税務署、日本政策金融公庫、税理士、社会保険労務士、所属する団体にも確認してください。開業資金の金額は出典により幅があり、特定の金額を保証するものではありません。