「産後骨盤矯正」を始める前に

「産後骨盤矯正」で検索すると、近隣の整骨院が次々に打ち出しています。産後の女性は続けて通ってくれそうで、自費の柱になりそうに見えます。実際、産後層は自費が成り立ちやすい対象です。ただ、真似て同じように打ち出す前に、二つのことを知っておく必要があります。

一つは、効能のうたい方です。広告で出せる内容には、厳しい制限があります。もう一つは、産後の体への配慮です。出産を終えた体は回復の途中で、安全の判断には医学が関わります。この二つを外すと、規制と安全の両方で事故になります。順に見ます。

保険でなく自費 柔道整復師は診断しない

まず位置づけです。産後の骨盤に向けた施術は、急なケガの治療ではありません。骨折や捻挫のような外傷ではないため、柔道整復の保険(療養費)の対象ではなく、自費になります。ここは交通事故やスポーツの急なケガとは扱いが違います。保険で請求してはいけません。

もう一つ、越えてはいけない線があります。柔道整復師は、骨盤の状態を画像などで診断する立場ではありません。「あなたの骨盤はこれだけ開いている」「これだけ歪んでいる」と、診断のように断定することはできません。産後の不調に医学的な原因が疑われるときは、産婦人科などの医療機関につなぎます。施術は、診断ではなく、できる範囲にとどめます。

「歪みが治る」「痩せる」はうたえない

ここが、いちばんの落とし穴です。「産後の骨盤の歪みが治る」「産後骨盤矯正で痩せる」「産後の不調が改善する」といった、症状改善や効能・効果をうたう表示は、柔道整復師法の広告の制限により、広告に出せません。「産後骨盤矯正専門」のような「専門」の表示も同じです。違反には罰金の定めがあります。

加えて、効果を裏づけなく断定して打ち出すことは、景品表示法の優良誤認にあたるおそれがあります。実際、体に着けて筋肉に働きかける機器の分野では、痩身などの効果表示に対して、国(消費者庁)が裏づけが不十分などとして是正を命じた例があります。産後骨盤矯正も、効果を断定して打ち出せば、同じ問題になり得ます。うたえるのは、効能ではなく、受けられる内容や時間、料金などの事実です。

産後の体への配慮と、産婦人科との連携

効能の次は、産後の体への配慮です。出産を終えた体は、回復の途中にあります。いつから施術を受けてよいか、受けてよい状態かは、人によって違い、医学的な判断が要ります。整骨院の側で「産後すぐから大丈夫」と決めることはできません。

だから、受ける時期や可否は、患者本人と、その産婦人科の判断を優先します。検診で問題がないか、いつから体を動かしてよいか。それを確かめてもらった上で、無理のない範囲で受け止めます。少しでも気になる症状があるときは、施術より先に医療機関の受診をすすめます。集客のために、回復を待たずに通わせるようなことはしません。

「産後◯か月から」を、院の売り文句にしない 「産後1か月から通える」といった時期の打ち出しは、安全の判断を院の側がしているように見えます。受けてよい時期は人によって違い、産婦人科の判断が要る事柄です。時期を売り文句にせず、「かかりつけの産婦人科で確認のうえ」を添えるのが、安全側の伝え方です。

規制と安全の中で、どう受け止めるか

効能はうたえない、安全は医療の判断を優先する。この二つを守った上で、では何ができるのか。できるのは、産後の女性が無理なく体を整える場として、事実を正直に示して受け止めることです。

伝えるのは、どんな施術が受けられるか、保険でなく自費であること、料金、産婦人科と連携していること。効果の断定や、不安をあおる打ち出しはしません。子連れで通いやすい環境を整える、予約を取りやすくするといった、事実の使い勝手で選んでもらいます。派手な効能ではなく、誠実さと安全への配慮で、長く続く関係を作ります。これは遠回りに見えて、産後の口コミがつながりやすい層では、いちばん確かな広がり方です。

今週やること

産後メニューを考えるなら、効能と安全の前提を先に固めます。

今週やる(産後メニューを考えるなら)

  • 産後の施術を「自費・効能をうたわない・産婦人科の判断を優先」の三つの前提で組めるか確かめる。
  • 看板・ホームページ・SNSに「歪みが治る」「痩せる」「専門」が出ていないか点検する。
  • 近隣の産婦人科と、連携や受診のすすめ方を整理する。

まだやらない

  • 「産後の歪みが治る」「産後ダイエット」など、効能をうたう打ち出し。
  • 「産後すぐから大丈夫」と、院の側で安全を判断すること。
  • 効果を強調して、回復を待たずに通わせること。

産後骨盤矯正は、自費の対象として有力な一方、効能と安全で踏み外しやすいテーマです。効能をうたわず、産婦人科の判断を優先し、事実で受け止める。この線を守れれば、産後の女性にとって安心して通える場になり、院にとっても長く続く柱になります。最初の自費メニューを何にするか、広告で何が出せるかは、関連記事にまとめています。

よくある質問

産後骨盤矯正は保険が使えますか?
使えません。柔道整復の保険(療養費)の対象は、外傷性がはっきりした骨折・脱臼・打撲・捻挫などの急なケガです。産後の骨盤に向けた施術は急なケガの治療ではないため、保険の対象外で、自費になります。交通事故やスポーツの急なケガとは扱いが違う点に注意します。
「骨盤の歪みが治る」「産後痩せる」と打ち出していいですか?
出せません。柔道整復師法では、症状改善や効能・効果、「専門」をうたう表示は広告に出せず、違反には罰金の定めがあります。さらに、効果を裏づけなく断定して打ち出すことは、景品表示法の優良誤認にあたるおそれがあります。健康や美容の分野では、効果表示に国が是正を命じた例もあります。うたえるのは効能ではなく、受けられる内容や料金などの事実です。
産後、いつから受けられますか?
整骨院の側で「産後すぐから大丈夫」と決めることはできません。出産を終えた体は回復の途中にあり、いつから受けてよいかは人によって違い、医学的な判断が要ります。受ける時期や可否は、患者本人とその産婦人科の判断を優先します。気になる症状があるときは、施術より先に医療機関の受診をすすめます。
柔道整復師は、骨盤の歪みを診断できますか?
できません。柔道整復師は、骨盤の状態を画像などで診断する立場ではありません。「これだけ開いている」「これだけ歪んでいる」と、診断のように断定することはできません。医学的な原因が疑われる不調は、産婦人科などの医療機関につなぎます。施術は、診断ではなく、できる範囲にとどめます。
効能をうたえないなら、何を伝えればいいですか?
事実を伝えます。どんな施術が受けられるか、保険でなく自費であること、料金、産婦人科と連携していること。効果の断定や、不安をあおる打ち出しはしません。子連れで通いやすい環境や、予約の取りやすさといった使い勝手で選んでもらいます。派手な効能ではなく、誠実さと安全への配慮で関係を作ります。

出典

SOURCES | 一次情報
  1. 厚生労働省「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関するガイドライン」(令和7年2月。広告できる事項は限定列挙、効能・効果や「専門」・誇大広告は不可、虚偽・誇大はウェブサイトも対象、景品表示法所管課室と連携) mhlw.go.jp/content/10800000/001412682.pdf (2026年6月確認)
  2. 厚生労働省「柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて」(療養費の支給対象は外傷性の骨折・脱臼・打撲・捻挫等。外傷でない施術は対象外=自費) mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/jyuudou/ (2026年6月確認)

本記事は、産後の女性向けの自費施術を始めるときの規制と安全の注意をまとめたものです。広告の可否、施術の範囲、産後の体への対応は、厚生労働省・消費者庁の最新情報、所属団体、連携先の医療機関にも確認してください。産後の体調については、必ずかかりつけの産婦人科の判断を優先してください。

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