回数券は何のために作るのか
回数券を作る目的は、値段を下げることではありません。患者に続けて通ってもらい、自費の売上を積み上げることです。1回きりで終わる施術は、どれだけ単価が高くても積み上がりません。続けて通う患者が10人いる院と、毎回新しい患者を10人探す院では、同じ売上でも残る力がまるで違います。
だから回数券は、続ける動機をつくる道具として考えます。前提が1つあります。続けて受ける値打ちのある自費メニューが、すでにあることです。単発で終わる施術に回数券だけ先に作っても、患者は使い切れず、不信のもとになります。まず続けたくなる中身があり、その上に回数券を載せます。
「割引の回数券」が利益を削る
回数券でいちばん多いのが、「10回分で1回無料」のような割引型です。一見お得に見えますが、これは10%の値引きを全員に配っているのと同じです。続けて通うつもりだった患者にまで割り引くことになり、利益を自分から削ります。
割引で引きつけると、割引がないと動かない患者が集まります。次は「もっと安く」を求められ、単価はさらに下がります。値引き幅は、まとめて前払いしてもらう手間への小さな謝礼にとどめ、続ける理由は安さでなく中身に置きます。安くしないと売れない回数券は、回数券より先に施術の中身を見直します。
続ける約束として設計する
続ける約束として設計するとき、決めることは4つです。先に紙に書き出してから売り始めます。
| 決めること | 考え方 | 例 |
|---|---|---|
| 回数 | 続けてほしい期間から逆算する | 週1回 × 2か月 = 8回 |
| 有効期限 | その回数を使い切れる長さにする | 8回で3か月 |
| 1回単価 | 通常料金から下げすぎない | 通常3,000円 → 回数券2,800円 |
| 中途解約・返金 | 使った分を通常料金で清算し残りを返す等、先に決める | 計算のしかたを掲示 |
数字は設計のしかたを示す例です。自院のメニューと通院間隔で決めます(2026年6月確認)。
割引幅は例の2,800円のように小さく保ち、回数券の値打ちは「次回の予約を毎回考えなくてよい」「続ける区切りができる」ことに置きます。安さでなく続けやすさで選んでもらう設計です。
月額(サブスク)にするなら
月額のサブスクにする手もあります。毎月決まった額で、決まった回数や内容を受けられる形です。ここで気をつけるのは、通い放題にしないことです。通い放題は、来る人だけが得をして、来ない人の不満と、来すぎる人への負担の両方を生みます。
月に何回まで、と回数や内容を区切ります。あわせて、やめやすさも設計に入れます。解約しにくいサブスクは、一時的に数字をつくっても、口コミと信頼を損ないます。いつでも解約できることと、解約の申し出は何日前まで、を先に決めて掲示します。
前払いを預かる責任と、返金の決めごと
回数券もサブスクも、患者から前払いを預かる点が同じです。これは、まだ提供していない施術の代金を、先に受け取っているということです。だから、使い切る前にやめたい、引っ越す、合わなかった、という場合の返金を、先に決めておきます。
返金の条件を曖昧にすると、もめごとになり、信頼を失います。「使った回数を通常料金で清算し、残りを返金する」のように、計算のしかたを掲示します。高額・長期の継続契約は消費者保護のルールに触れることがあるため、規模が大きくなるなら専門家に確認します。
今週やること
回数券は、思いつきで売り始めると返金でもめます。中身と決めごとを先に固めます。
今週やる
- 続けて受ける値打ちのある自費メニューが、すでにあるか確かめる。なければ回数券より先に中身を作る。
- 回数・有効期限・1回単価・返金条件の4つを、紙に書き出す。
- 返金の計算のしかたを、掲示できる文にする。
まだやらない
- 「○回で1回無料」のような大きな割引型。
- 通い放題のサブスク。
- 効能をうたう回数券の広告。
回数券は、患者を縛る道具ではなく、続けやすくする道具です。安さで引きつけず、続ける値打ちと、もしものときの返金を先に決めておけば、患者も院も安心して使えます。単価そのものの決め方は、関連記事にまとめています。継続契約の細かな扱いは、規模に応じて専門家にも確認してください。
よくある質問
出典
- 厚生労働省「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関するガイドライン」(令和7年2月。広告できる事項は柔道整復師法で限定列挙、効能・効果や「専門」は不可、保険か自費かを問わない) mhlw.go.jp/content/10800000/001412682.pdf (2026年6月確認)
回数券・月額制の法的な扱いは、金額や期間、内容によって変わります。前払いの返金や継続契約の条件は、消費者保護のルールに触れることがあるため、規模が大きくなる場合は所属団体や専門家に確認してください。本記事は設計の考え方をまとめたものです。