なぜ原価でなく「時間」で決めるのか

自費の単価を決めるとき、最初に外したいのが原価からの発想です。物販なら仕入れ値に利益を乗せれば値段が出ますが、手技の施術は材料費がほとんどかかりません。患者が払うのは、物ではなく、あなたが施術にかける時間と技術です。だから単価は、原価ではなく時間を起点に組み立てます。

考え方はまっすぐです。1回の施術に30分かけるなら、その30分で院が成り立つ額はいくらか。これを先に決め、そこから1回の料金を逆算します。原価を積み上げるのではなく、時間あたりいくら欲しいかから割り出す。この順番が、値付けの軸になります。

時間単価から1回の料金を出す

時間あたりいくら欲しいかは、感覚ではなく計算で出せます。順番は5つです。自院の数字を当てはめれば、その場で料金が出ます。

手順出すもの計算の例
自費で月にいくら欲しいか(目標月商)15万円
自費に使える時間(1日の枠 × 月の稼働日)1日2時間 × 25日 = 50時間
必要な時間単価(① ÷ ②)3,000円/時間
1回の施術時間30分
1回の料金(③ × 施術時間)1,500円

数字は計算のしかたを示す例です。目標月商・自費に使える時間・施術時間に自院の値を入れて出します(2026年6月確認)。

もっと欲しいなら、時間単価を上げるか、1回を短くします。月商を30万円にしたいなら時間単価は6,000円、30分の施術で3,000円です。出した料金が妥当かは、同じ時間を保険の施術に使った場合と比べて確かめます。柔道整復療養費の後療料は1部位で数百円、令和8年度の改定案では550円です。2部位目以降は逓減されるため、30分で保険の患者を診て得られる額には上限があります。自費が同じ30分でそれを下回るなら、自費にする意味は薄くなります。

近隣の相場は、自分で調べる

計算で出した料金は、近隣の相場とも照らします。ここで気をつけるのは、相場を感覚や伝聞で決めないことです。同じ産後骨盤矯正でも、地域や内容で2倍以上の差が出ることは珍しくありません。「だいたいこのくらい」で決めると、根拠のない安値や高値になります。

調べ方は具体的です。近隣の整骨院のホームページや店頭の料金表示を、自分で5件から10件見て回ります。相場は1つの数字でなく幅で捉え、その幅の中で、自院の技術と施術時間に見合う位置を選びます。安い側に合わせる必要はありません。計算で出した必要単価が相場の上のほうに来るなら、施術時間を短くするか、提供する内容を見直して折り合いをつけます。

安すぎる値付けが、後で効いてくる

値付けで最も多い失敗は、安く始めることです。通いやすさを優先して低く設定すると、後から上げるのが難しくなります。一度2,000円で受けた患者は、3,000円への引き上げを値上げと受け取ります。最初を強気の側から始め、反応を見て下げるほうが、上げるより無理がありません。

値引きや回数券の安売りも、単価を崩します。「今だけ半額」を繰り返すと、その半額が患者の中の基準になり、通常料金に戻したときに高く感じさせます。割引はきっかけづくりに一度きりで使い、続けて出さない。回数券は1回あたりを下げすぎず、続ける動機になる範囲にとどめます。

料金表示と広告で気をつけること

決めた料金は、院内に掲示し、患者に直接案内するのは問題ありません。むしろ自費の額は、患者が分かるように示しておく必要があります。気をつけるのは、外向きの広告です。柔道整復師法では施術所が広告できる事項が限られていて、保険か自費かを問いません。

「骨盤矯正3,000円、歪みが治る」のような表示は、「治る」が効能・効果にあたり、広告に出せません。料金を見せたいときも、事実の範囲(受けられる内容・施術時間・金額)にとどめ、効能で引きつけないのが安全です。広告で何が出せて何が出せないかは、集客側の記事にまとめています。

今週やること

単価は、迷っているうちは決まりません。手元の数字で一度出してみることから始めます。

今週やる

  • 自費メニュー1つについて、目標月商と自費に使える時間から、必要な時間単価を出す。
  • 近隣5〜10件の料金を自分で調べ、相場を幅で把握する。
  • 計算と相場をすり合わせ、強気の側から1回の料金を決める。

まだやらない

  • 通いやすさだけを理由にした安値設定。後から上げにくくなる。
  • 「今だけ半額」の繰り返し。半額が患者の基準になる。
  • 料金と効能をセットにした広告。「治る」「効く」は出せない。

単価は一度決めて終わりではなく、反応を見ながら直していくものです。最初を安く置かず、時間から逆算した額で始めれば、後から無理なく整えられます。最初の自費メニューを何にするかは、関連記事にまとめています。料金の細かな広告可否は、所属団体にも確認しながら進めてください。

よくある質問

自費の単価は何を基準に決めますか?
材料の原価でなく、施術にかける時間を基準にします。自費で月にいくら欲しいか(目標月商)を、自費に使える月の時間で割って時間単価を出し、それに1回の施術時間をかけて料金を出します。手技は材料費がほとんどかからず、患者が払うのは施術の時間と技術だからです。
近隣より高い単価にしても大丈夫ですか?
相場は幅で見ます。同じ内容でも地域や院で2倍以上の差が出るため、安い側に合わせる必要はありません。技術と施術時間に見合う位置を幅の中で選びます。下限の目安は、同じ時間を保険の施術に使った場合の額を上回ることです。
最初は安くして、あとで上げてもいいですか?
あとで上げるのは難しくなります。一度受けた料金が患者の基準になり、引き上げを値上げと受け取られるためです。最初を強気の側から始め、反応を見て下げるほうが無理がありません。通いやすさだけで低く設定すると、何のための自費か分からなくなります。
料金を看板やホームページに出していいですか?
院内の掲示や患者への案内は問題なく、むしろ自費の額は分かるように示す必要があります。気をつけるのは外向きの広告で、柔道整復師法では広告できる事項が限られ、保険か自費かを問いません。「3,000円で歪みが治る」のように料金と効能をセットにした表示は、効能の部分が出せません。
回数券で1回あたりを安くするのはどうですか?
続ける動機になる範囲なら使えますが、1回あたりを下げすぎないことです。「今だけ半額」を繰り返すと、その半額が患者の基準になり、通常料金を高く感じさせます。割引はきっかけづくりに限り、常態化させないのが単価を崩さないこつです。

出典

SOURCES | 一次情報
  1. 厚生労働省「柔道整復療養費の令和8年度料金改定(案)」(第35回柔道整復療養費検討専門委員会・令和8年4月30日。後療料505円→550円などの改定案) mhlw.go.jp/content/12404000/001696843.pdf (2026年6月確認)
  2. 厚生労働省「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関するガイドライン」(令和7年2月。広告できる事項は柔道整復師法で限定列挙、効能・「専門」は不可) mhlw.go.jp/content/10800000/001412682.pdf (2026年6月確認)

後療料などの金額は令和8年度の改定案で、最終的な料金は告示・通知で確定します。料金の広告可否や掲示の取扱いは運用が変わることがあります。実際の判断は、厚生労働省の最新情報や所属団体にも確認してください。

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