踏み切れない理由は、知識でなく3つの壁

自費化のやり方をまとめた本や動画は、世の中にたくさんあります。それでも踏み切れないのは、やり方を知らないからではありません。知っていても動けないのは、3つの壁が外れていないからです。お金を取ることへの罪悪感、断られる怖さ、保険のほうが楽だという慣れ。この3つです。

大事なのは、3つを一度に越えようとしないことです。人によって、いちばん高い壁は違います。お金の話が苦手な人、断られるのがこたえる人、忙しくて保険から手が離せない人。自分のどれがいちばん高いかを見て、そこから一つずつ外します。順に見ていきます。

壁1 お金を取る罪悪感を外す

長く保険でやってきた人ほど、「患者からお金を取る」ことに後ろめたさを感じます。窓口の少ない負担で診てきたぶん、自費の金額を口にするのがためらわれる。この罪悪感が、いちばん奥にある壁です。

外し方は、自費の意味を捉え直すことです。自費は、保険の対象外の施術を正しく案内し、その対価を受け取る仕事です。後ろめたいことではありません。むしろ、保険の対象でない再発予防や慢性の施術を、保険のまま続けるほうが、患者にも院にも不誠実です。正しく線を引いて自費で受け止めるのは、ごまかさない向き合い方だと考えれば、罪悪感は軽くなります。

壁2 断られる怖さを外す

次の壁は、提案して断られる怖さです。断られると、自分の施術を否定された気がする。だから提案そのものを避けてしまう。ここでつまずく人は多いです。

怖さの正体は、全員に売ろうとすることです。全員が受けて当然と思うから、断りが失敗に見えます。設計を変えます。新しい患者ではなく、すでに信頼のある患者に、1人ずつ提案する。断られて当然、受けてくれたら有り難い、という構えにしておく。10人に話して2人が受ければ十分です。断りは失敗ではなく、合わなかっただけだと分かれば、提案の一歩が軽くなります。

壁3 保険の楽さに頼る癖を外す

3つめは、保険のほうが楽だという慣れです。保険の施術は、説明も値付けも要らず、流れができている。自費を始めるより、今まで通りのほうが手間がかからない。だからつい元に戻ります。

ただし、その楽さは短い目で見たときだけのものです。柔道整復療養費は、平成25年度の3,855億円から令和3年度の2,867億円へ約26%減り、一方で施術所は令和4年度末で5万を超えて増えています。1院あたりの保険収入は細っていきます。今の楽さは、先細りと同じです。とはいえ、一気に保険を捨てる必要はありません。小さく1メニューだけ自費を載せて、楽さに頼る割合を、少しずつ下げていきます。

壁を外す順番と、やってはいけない近道

3つの壁は、内側から外すと無理がありません。順番はこうです。

  1. まず罪悪感を外す。自費は誠実な仕事だと捉え直す。ここが残ったままだと、何をしても声が小さくなります。
  2. 次に、信頼のある患者1人に小さく試す。断られる怖さは、一度受けてもらえると一気に下がります。
  3. 最後に、うまくいったやり方を少しずつ広げる。型ができてから増やします。

順番を飛ばした近道は、別の問題を生みます。いきなり保険をやめると収入が落ちて慌てます。値段を下げて売ると、安くしないと動かない患者が集まります。「治る」と効能で釣ると、広告の制限に触れ、信頼も損ないます。近道のように見えて、どれも遠回りです。

今週やること

壁は、考えているだけでは外れません。一つだけ、小さく動きます。

今週やる

  • 3つの壁のうち、自分でいちばん高いものを一つ選ぶ。
  • 信頼のある患者を1人だけ思い浮かべ、その人に出す自費の一言を用意する。
  • 断られても次があると決めて、今週そのひと言だけ試す。

まだやらない

  • 保険を一気にやめること。収入が落ちて慌てる。
  • 値段を下げて売ること。安さ目当ての患者が集まる。
  • 「治る」と効能をうたって売ること。広告の制限に触れる。

踏み切れないのは、あなたが弱いからではなく、誰にでもある壁が外れていないだけです。一つ選んで、1人に、一言。そこから型ができれば、あとは広げるだけです。最初の自費メニューを何にするか、患者にどう説明するかは、関連記事にまとめています。

よくある質問

自費が必要と分かっているのに、踏み切れません。
やり方を知らないからではなく、3つの壁(お金を取る罪悪感・断られる怖さ・保険の楽さ)が外れていないからです。やり方の本を何冊読んでも、壁が残ると動けません。自分のどの壁がいちばん高いかを見て、そこから一つずつ外します。一度に全部を変えようとしないことです。
お金を取ることに、後ろめたさがあります。
自費は、保険の対象外の施術を正しく案内して対価を受け取る仕事で、後ろめたいことではありません。むしろ、対象でない再発予防や慢性の施術を保険のまま続けるほうが不誠実です。正しく線を引いて自費で受け止めるほうが、誠実な向き合い方だと捉え直します。
断られるのが怖くて、提案できません。
全員に売ろうとするから怖くなります。新しい患者でなく、すでに信頼のある患者に1人ずつ提案します。断られて当然、受けてくれたら有り難い、という設計にすれば、断りは失敗ではなくなります。10人に話して2人が受ければ十分、というくらいの構えで小さく始めます。
保険のほうが楽なので、つい元に戻ってしまいます。
保険の楽さは、短い目で見たときだけのものです。療養費は平成25年度から令和3年度で約26%減り、施術所は5万を超えて増えています。1院あたりの保険収入は細ります。今の楽さは先細りです。一気に保険を捨てず、小さく1メニューから自費を載せて、頼る割合を少しずつ下げます。
壁は、どの順番で外せばいいですか?
内側から外します。まず罪悪感を、自費は誠実な仕事だと捉え直して外し、次に信頼のある患者1人に小さく試して怖さを下げ、最後にうまくいったやり方を広げます。順番を飛ばして、いきなり保険を捨てる、値段を下げる、効能で釣る、といった近道は別の問題を生みます。

出典

SOURCES | 一次情報
  1. 厚生労働省「柔道整復、はり・きゅう、マッサージ、治療用装具に係る療養費の推移(推計)」(柔道整復療養費は平成25年度3,855億円→令和3年度2,867億円、約26%減) mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/111116_01.pdf (2026年6月確認)
  2. 厚生労働省「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(柔道整復の施術所は令和4年度末50,919か所で増加) mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/22/ (2026年6月確認)

本記事は、自費化に踏み切れないときの考え方をまとめたものです。請求の適正や広告の可否は、厚生労働省の最新情報や所属団体にも確認してください。

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