「自費比率◯%」を目標にしてはいけない
自費比率を調べると、「20%が目安」「半分は自費に」など、答えがばらばらに出てきます。どれを信じればいいか分からなくなりますが、結論から言うと、どの数字も自院の目標にはなりません。出回る「業界平均◯%」の多くは、出典がはっきりせず、どんな院を集めた平均かも分かりません。
そもそも、適正な割合は院ごとに違います。駅前で交通事故の患者が多い院と、住宅街で高齢者が多い院では、保険と自費のちょうどいい割合が違って当然です。他院の平均に自院を合わせることに、意味はありません。平均は、目標ではなく、ただの他人の事情です。
比率は目標でなく、結果
もっと大事なのは、比率は目標ではなく、結果だということです。続けたい自費メニューを作り、いまの患者に丁寧に案内し、その積み重ねの結果として、自費の割合が上がっていく。正しい順番はこちらです。
これを逆にすると、危ない方向に進みます。「自費比率を上げる」を先に目標に置くと、自費を増やすのではなく、保険を削って比率を上げようとしがちです。分母である保険を減らせば、同じ自費額でも比率は上がります。でも、それは売上が増えたわけではありません。比率という数字だけを追うと、中身のない達成になります。
目指すのは「保険が減っても回る」構造
では、何を目指すのか。比率という割合ではなく、「保険が減っても院が回る」という構造です。柔道整復療養費は平成25年度から令和3年度で約26%減り、施術所は令和4年度末で5万を超えて増えています。これからも、1院あたりの保険収入が増える見通しは立てにくい。だから、保険が今より減っても固定費を払える状態を作ることが、本当の目標です。
具体的には、家賃や人件費といった毎月の固定費を思い浮かべ、そのうちどれだけを自費で賄えるかを見ます。保険がゼロでも困らない、とまでは言いません。保険が2割減っても院が回る、くらいの厚みがあれば、制度の変化に振り回されずに済みます。比率は、その厚みを作った結果としてついてくる数字です。
比率の前に、自費の額と続く人数を見る
その厚みは、比率では測れません。見るのは、自費の絶対額と、続いている人数です。比率が30%でも、母数が小さければ自費額はわずかです。比率が20%でも、母数が大きく、続けて通う人が多ければ、自費額は厚くなります。割合より、いくら積み上がっているか、何人が続けているかを見ます。
毎月、自費の合計額と、自費を続けている患者の人数を記録します。この2つが、ゆっくりでも増えているなら、構造は正しい方向に向かっています。比率は、その結果としてついてくる数字として、参考に見るくらいでちょうどいいです。数字を一つだけ手元に置くなら、比率ではなく、自費の月額です。
比率を上げるための、やってはいけない数字いじり
比率を目標にすると、もう一つ危ない近道が見えてきます。請求の線引きを、数字の都合で曲げることです。比率を上げたくて、本来は保険で診るべき急なケガまで自費に回すと、患者から受けられるはずの保険を取り上げることになります。逆に、対象でない慢性の施術を保険で請求し続けるのは、よく知られた不正請求です。どちらも、比率のために線引きを崩す行為です。
今週やること
比率を追うのをやめ、手元の額を見るところから始めます。
今週やる
- 毎月の固定費(家賃・人件費など)の合計を出す。
- 先月の自費の合計額と、自費を続けている患者の人数を数える。
- 自費の額が固定費のどれくらいを賄えているかを見て、次の3か月で少し増やす目安を置く。
まだやらない
- 「業界平均◯%」を自院の目標にすること。
- 比率を上げるために保険を削る、付け替える数字いじり。
- 保険を急にやめること。構造ができる前に分母を壊さない。
自費比率は、見栄えのする数字です。だからこそ、それ自体を目標にすると道を誤ります。目指すのは比率ではなく、保険が減っても回る厚み。自費の額と続く人数を毎月見て、ゆっくり積み上げれば、比率は後からついてきます。最初の自費メニューを何にするかは、関連記事にまとめています。
よくある質問
出典
- 厚生労働省「柔道整復、はり・きゅう、マッサージ、治療用装具に係る療養費の推移(推計)」(柔道整復療養費は平成25年度3,855億円→令和3年度2,867億円、約26%減) mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/111116_01.pdf (2026年6月確認)
- 厚生労働省「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(柔道整復の施術所は令和4年度末50,919か所で増加) mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/22/ (2026年6月確認)
本記事は、自費比率の考え方をまとめたものです。比率や金額の目標は院の状況で変わります。請求の適正は、厚生労働省の最新情報や所属団体・保険者の案内でも確認してください。