物販をやる前に、二つの落とし穴

物販は、うまくやれば自費の小さな補助になります。施術で使うサポーターや、姿勢を支えるインソールなど、患者が実際に役立てるものを置けば、通院の延長で売れます。ただ、勢いで始めると、二つの落とし穴にはまります。

一つは、規制です。とくにサプリや健康食品は、言えることが厳しく決まっていて、知らずに効能をうたうと法律に触れます。もう一つは、経営です。在庫を抱えすぎて現金が寝たり、売上ほしさに押し売りになって信頼を失ったり。この二つを避けられるかが、物販をやるかどうかの分かれ目です。

用具とサプリは、規制の重さが違う

物販と一口に言っても、扱うものによって規制の重さがまるで違います。大きく二つに分けて考えます。

種類言えること・注意
用具
(サポーター・インソール・枕など)
どんな場面で使うか、どう体を支えるかといった用途で説明できる。実用品として勧めやすい。
サプリ・健康食品「痛みが治る」「関節に効く」など医薬品のような効能はうたえない。規制が重く、言えることが限られる。

扱う商品ごとに、表示や説明のルールは変わります。仕入れ前に確認します(2026年6月確認)。

用具は、使う場面を説明できるぶん、勧めやすく、規制も比較的軽いです。一方、サプリや健康食品は、つい「これは関節にいい」と言いたくなりますが、ここがいちばん危ない。次の章で、何が言えないかを具体的に見ます。

サプリ・健康食品に「効く」はうたえない

サプリや健康食品は、医薬品ではありません。だから、「痛みが治る」「関節に効く」「軟骨が再生する」といった、医薬品のような効能・効果をうたうことはできません。これは医薬品医療機器等法に触れます。効果を誇大に示せば、健康増進法や景品表示法の優良誤認の問題にもなります。消費者庁も、健康食品の表示について留意事項を示しています。

口頭での説明も同じです。「これを飲めば膝の痛みが取れますよ」と言って売れば、表示でなく口頭でも、効能をうたったことになります。施術で信頼されている院長の言葉ほど、患者は真に受けます。だから、サプリを置くなら、言えるのは事実の範囲だけだと、自分にもスタッフにも徹底します。迷うものは、置かないのが安全です。

在庫と押し売り 経営の落とし穴

規制をクリアしても、経営の落とし穴が二つ残ります。在庫と、押し売りです。

まず在庫。物販は、売れ残るとそのまま損失になります。品ぞろえを増やすこと自体が目的になると、棚は埋まっても、現金が在庫に変わるだけです。最初から多くを仕入れず、よく使う数点を少量から置き、売れ行きを見て足します。次に押し売り。売上ほしさに、毎回すべての患者に勧めたり、断りにくい雰囲気で迫ったりすると、その場は売れても、通院そのものへの信頼を損ないます。物販の利益より、通ってもらうことのほうが、はるかに大きいと忘れないことです。

やるなら、用途で勧める

二つの落とし穴を避けたうえで、物販をやるなら、勧め方は一つです。効能でなく、用途で勧めます。施術の中で、この患者にはこれが役立つと感じたときに、選択肢の一つとして示す。買うかどうかは、患者に委ねます。

「家でも同じ位置を支えられるように、こういうサポーターがあります」「合わなければ使わなくて大丈夫です」。この温度で十分です。効能で釣らず、必要な人に必要なものを、無理なく渡す。これなら、物販は患者の役に立ち、院の自費を少し支え、信頼も損ないません。物販は、主役ではなく、施術の信頼に乗せる小さな補助として置きます。

今週やること

物販を考えるなら、何を置くかより先に、言えることと在庫の方針を決めます。

今週やる(物販を考えるなら)

  • 置きたい商品を、用具とサプリ・健康食品に分けて、それぞれ何が言えるかを確かめる。
  • サプリ・健康食品を置くなら、効能をうたわない説明の範囲を、スタッフと共有する。
  • 最初の仕入れは、よく使う数点を少量から。在庫を抱えすぎない。

まだやらない

  • 「痛みが治る」「関節に効く」と、サプリの効能を口頭でも表示でもうたうこと。
  • 品ぞろえを増やすための、まとまった量の仕入れ。
  • 毎回すべての患者に勧める、断りにくい売り方。

物販は、自費の主役にはなりませんが、用途で正しく勧めれば、患者の役に立つ小さな補助になります。サプリ・健康食品の効能はうたわない、在庫は小さく、押し売りはしない。この三つを守れば、規制にも経営にもつまずきません。最初の自費メニューを何にするかは、関連記事にまとめています。商品ごとの表示の可否は、仕入れ先や所属団体にも確認してください。

よくある質問

接骨院で物販をやるのは、ありですか?
患者の役に立つ範囲なら、自費の補助になります。ただし二つの落とし穴を避けます。サプリや健康食品に医薬品のような効能をうたう規制違反と、在庫の抱えすぎ・押し売りです。施術の延長で本当に役立つものを、効能でなく用途で勧め、在庫を小さく保つなら、無理なく続きます。利益を先に置くと信頼を損ないます。
サポーターとサプリでは、扱いが違いますか?
規制の重さが違います。サポーターやインソール、枕などの用具は、どんな場面で使うか、どう体を支えるかといった用途で説明できます。一方、サプリや健康食品は「痛みが治る」「関節に効く」といった医薬品のような効能をうたえません。サプリ・健康食品のほうが規制が重く、言えることが限られます。
サプリに「関節に効く」と説明して売っていいですか?
いけません。健康食品やサプリは医薬品ではないため、「痛みが治る」「関節に効く」「軟骨が再生する」といった医薬品のような効能・効果をうたえません。医薬品医療機器等法に触れ、効果を誇大に示せば健康増進法や景品表示法の問題にもなります。消費者庁も健康食品の表示について留意事項を示しています。説明できるのは事実の範囲です。
在庫はどれくらい持てばいいですか?
小さく始めます。物販は売れ残ると在庫がそのまま損失になります。最初から多くを仕入れず、よく使う数点を少量から置き、売れ行きを見て足します。患者が本当に使うものに絞れば在庫は回ります。品ぞろえを増やすこと自体が目的になると、棚は埋まっても現金が在庫に変わるだけです。
押し売りにならないか心配です。
勧める目的を、利益でなく患者の役に立つことに置けば、押し売りにはなりません。施術の中で必要だと感じたときに、選択肢の一つとして示し、買うかは患者に委ねます。毎回すべての患者に勧める、断りにくい雰囲気で迫る、といったやり方は、その場は売れても通院への信頼を損ないます。物販は信頼の上に乗せる小さな補助です。

出典

SOURCES | 一次情報
  1. 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(健康食品は医薬品的な効能効果を標榜できず、効果の優良誤認表示等を禁止) caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/…/representation_cms213_230131_01.pdf (2026年6月確認)
  2. 厚生労働省「医薬品等の広告規制について」(医薬品でないものに医薬品的な効能効果を標榜できない=医薬品医療機器等法。虚偽・誇大広告の禁止) mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/koukokukisei/ (2026年6月確認)

健康食品やサプリ、用具の表示・説明の可否は、商品や成分によって異なります。仕入れや販売の判断は、消費者庁・厚生労働省の最新情報、仕入れ先、所属団体にも確認してください。本記事は物販をやるか判断するときの考え方をまとめたものです。

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