電子化は「紙で困っているか」で決める

紙カルテを電子にするかは、流行や周りに合わせてではなく、紙で困っていることがあるかで決めます。目当てのカルテを探すのに時間がかかる、保管場所が足りなくなってきた、レセコンや予約と別々に書いていて二度手間になっている。こうした課題があるなら、電子化が効きます。

逆に、今のところ紙で回っていて困っていないなら、急いで変える必要はありません。ただ、記録は年々増え、レセコンや予約との連携も進みます。長い目で見れば、電子化は事務を軽くする方向です。今すぐでなくても、いずれは検討する前提で、課題が出てきたら動きます。

何が楽になるのか(検索・場所・連携)

電子化で楽になるのは、主に三つです。自院の困りごとと照らして見ます。

楽になること中身
検索患者名や日付で、目当ての記録をすぐ呼び出せる。探す時間が大きく減る。
保管場所紙の棚が要らなくなり、院内の場所が空く。増え続ける紙に追われない。
連携レセコンや予約とつながり、同じことを二度書く手間が減る。

効き方は院の状況で変わります。いちばん困っていることに効くかで判断します(2026年6月確認)。

三つのうち、自院でいちばん困っているものに効くかで選びます。とくに、レセコンや予約とつながるかは、二度手間を減らす点で大きく効きます。

施術録の作成・保存の義務は変わらない

電子化を考えるとき、いちばん押さえるのが、施術録の義務です。柔道整復師には、施術の記録を作成する義務があります。さらに、受領委任を扱う施術所では、施術録を一定の期間、保存することが求められます。これは、紙か電子かを問いません。電子にしても、この作成と保存の義務はそのまま残ります。

だから、電子で記録を残すなら、保存の要件を満たすことが前提です。データが消えないようにバックアップを取り、決められた期間、確実に残せる形にしておく。便利だからと安易に選んで、保存の要件を満たさないシステムを入れると、義務を果たせなくなります。保存の期間や要件は、所属団体や厚生労働省の取扱いで確認します。

移行は紙と並行で、急がない

電子化を決めても、移行は急がないことです。紙を一気に捨てて、いきなり全部を電子に切り替えると、慣れない時期に記録が抜けたり、過去のカルテが見られなくなったりします。

進め方は、並行です。新しい記録から電子にし、過去の紙カルテは、しばらく残して両方を見られるようにします。保存の期間が残っている紙は、そのまま保管します。過去分をすべて電子に入れ直すかは、手間と必要性を見て決めます。全部を遡って入力するより、新しい分から電子にして、古い紙は保管、という形が現実的です。

バックアップと、障害時の備え

電子化でいちばん大事な備えが、記録を失わないことです。データが端末だけにあると、故障や災害で消えます。これは、紙にはなかったリスクです。

バックアップと、止まらない手順をセットで 定期的にバックアップを取り、別の場所にも控えを持ちます。あわせて、停電や通信の不具合で記録が一時的に見られないときに、施術と会計を止めないための手順も決めておきます。電子化の便利さは、記録を失わない備えと、止まらない手順がそろって、はじめて安心して使えます。導入の前に、バックアップと障害時の備えを必ず確かめます。

探す手間や連携の課題に効かせつつ、保存の義務を満たし、記録を失わない備えを置く。この三つがそろえば、電子化は事務を確かに軽くします。

今週やること

電子化は、課題と義務を確かめてから決めます。

今週やる

  • 紙で困っていること(探す手間・場所・二度手間)を書き出し、電子化で効くかを見る。
  • 施術録の保存の期間や要件を、所属団体や厚生労働省の取扱いで確認する。
  • 候補のシステムが、保存の要件を満たし、バックアップを取れるかを確かめる。

まだやらない

  • 保存の要件やバックアップを確かめないままの導入。
  • 紙を一気に捨てて、いきなり全部を電子に切り替えること。
  • 過去の紙を、必要性を見ずにすべて入力し直すこと。

紙カルテの電子化は、探す手間や場所、連携の課題に効きますが、施術録の保存の義務は電子でも残ります。課題に効くかを見て、保存の要件を満たし、記録を失わない備えを置き、移行は並行で急がない。これを守れば、安心して紙を手放せます。レセコンの選び方は、関連記事にまとめています。

よくある質問

紙カルテは、電子にしたほうがいいですか?
電子化するかは、紙で困っていることがあるかで決めます。探すのに時間がかかる、保管場所が足りない、レセコンや予約と二度手間になっている、といった課題があるなら効きます。困っていないなら急ぐ必要はありませんが、記録は増え、連携も進むため、長い目では電子化が事務を軽くします。
電子にしても、施術録の保存義務は変わりませんか?
変わりません。柔道整復師には施術録を作成する義務があり、受領委任を扱う施術所では一定期間の保存が求められます。電子化してもこの作成と保存の義務は残ります。電子で残す場合は、保存の要件を満たし、データが消えないようバックアップを取ることが前提です。期間や要件は所属団体や厚生労働省の取扱いで確認します。
移行は、どう進めればいいですか?
紙を一気に捨てず、並行する期間を取ります。新しい記録から電子にし、過去の紙カルテはしばらく残して両方を見られるようにします。保存の期間が残っているものはそのまま保管し、停電や端末の不具合で見られないときの備えも先に決めます。慣れない時期に記録が抜けると困るため、移行はゆっくり確実に進めます。
停電や故障で、記録が見られなくなりませんか?
その備えが電子化でいちばん大事な点です。データが端末だけにあると、故障や災害で失われます。定期的にバックアップを取り、別の場所にも控えを持つことが前提です。停電や通信の不具合で一時的に見られないときに、施術を止めない手順も決めておきます。便利さと、記録を失わない備えを必ずセットにします。
電子化の費用は、どれくらいですか?
システムによって幅があり、月額の利用料がかかるものが中心です。レセコンに記録の機能が含まれている場合もあれば、別に用意する場合もあります。最初から高機能なものを入れず、探す手間や連携といった減らしたい課題に効く範囲で選び、費用と保存・バックアップの要件を満たせるかをあわせて確かめます。

出典

SOURCES | 一次情報
  1. 厚生労働省「柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて」(受領委任の取扱いにおける施術録の作成・保存に関する定め) mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/jyuudou/ (2026年6月確認)
  2. 個人情報保護委員会(電子カルテは患者の個人情報を扱うため、適正な保管・安全管理が求められる) ppc.go.jp (2026年6月確認)

施術録の保存期間や要件、電子保存の取扱いは、受領委任の規程や時期によって異なります。実際の判断は、厚生労働省の最新情報、所属団体、各システムの仕様で確認してください。本記事は電子化を判断するときの考え方をまとめたものです。特定の製品の宣伝ではありません。

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