返戻は、なぜ起きるのか
返戻は、申請した療養費が、保険者から「このままでは支払えないので、直して出し直してほしい」と差し戻されることです。支払いを断られる不支給とは違い、直して再提出すれば支払われます。ただし、やり直しの手間と、入金が遅れるという負担が、その都度かかります。
返戻が起きるのは、保険者が申請書を点検したとき、内容に確かめたい点が残っているからです。多くは、書類の記載の不備か、負傷の原因がはっきりしないことから起きます。つまり、書き方を整えれば、相当数は出す前に防げます。まず、何が多い理由かを具体的に見ます。
返戻が多い理由を、具体的に知る
返戻の理由は、いくつかの型に分かれます。自院の返戻が、どの型に当てはまるかを知ると、直すところが見えます。
| 多い理由 | 中身 |
|---|---|
| 記載の不備 | 記入漏れ、誤記、施術日や回数の食い違い。単純なミスだが件数は多い。 |
| 負傷原因のあいまいさ | いつ・どこで・何をして負傷したかが、具体的に書かれていない。照会の最大の入り口。 |
| 部位の不整合 | 負傷した部位と、施術した部位が合っていない。説明が必要になる。 |
| 多部位・長期・頻回 | 部位が多い、期間が長い、回数が多い請求は、点検の対象になりやすい。 |
| 署名・同意の不備 | 患者の署名や、必要な同意が整っていない。 |
理由の表れ方は保険者によって違います。自院に届いた返戻の理由を、まず書き出して型に分けます(2026年6月確認)。
このうち、件数として多く、かつ防ぎやすいのが、記載の不備と負傷原因のあいまいさです。次の二つの手順で、ここを直します。
減らす手順1 負傷原因を具体的に書く
返戻のいちばんの入り口が、負傷原因のあいまいさです。「腰を痛めた」「肩が痛い」だけでは、保険の対象になる急なケガなのかが、保険者に伝わりません。だから照会が入り、返戻になります。
防ぎ方は、原因を、いつ・どこで・何をして、の三つで具体的に書くことです。たとえば「3日前、自宅で重い荷物を持ち上げたときに腰をひねった」のように、場面が浮かぶ形にします。あいまいな原因を、毎回同じ言い回しで使い回すのも、点検で目立ちます。一人ひとりの実際の負傷を、その都度、具体的に書きます。
減らす手順2 多部位・長期は理由を添える
もう一つ点検されやすいのが、多部位・長期・頻回の施術です。部位が多い、期間が長い、回数が多い請求は、保険者が中身を確かめたくなります。柔道整復療養費の審査は、コンピュータによるチェックを導入する方向で議論されており、こうした傾向はこれまで以上に見えやすくなります。
だから、多部位や長期になる場合は、なぜそうなるのかの理由を添えます。複数の部位を同時に負傷した事情、施術が長引いている理由を、申請書の中で説明できるようにしておく。理由のない多部位・長期は、点検の対象になり、返戻や照会につながります。中身を見られても説明できる請求にしておくことが、返戻を減らす土台です。
請求前のチェックと、やってはいけないこと
記載を整えたら、最後に、請求を出す前のチェックを手順に組み込みます。署名や同意がそろっているか、施術日や部位に食い違いがないか、負傷原因が具体的に書けているか。レセコンのチェック機能と、目視での確認を、送る前のひと手間として固定します。出してから直すより、出す前に止めるほうが、手間も入金の遅れも小さく済みます。
今週やること
返戻は、原因を知って、出す前のひと手間を決めれば減ります。
今週やる
- 直近で届いた返戻の理由を3つ書き出し、どの型に当てはまるかを分ける。
- 負傷原因の記載を、いつ・どこで・何をして、の3点で書けているか見直す。
- 署名・部位・施術日を、請求前に確かめる手順を一つ決める。
まだやらない
- 返戻回避のための、事実と違う負傷原因の記載。これは不正請求にあたる。
- 同じ負傷原因の使い回し。点検で目立つ。
- チェックなしの一括送信。出す前に確かめる手順を入れる。
返戻は、ゼロにはできなくても、記載のあいまいさを直せば大きく減らせます。負傷原因を具体的に、多部位・長期は理由を添えて、出す前に確かめる。この三つを手順にすれば、毎月のやり直しと入金の遅れが軽くなります。審査がコンピュータ化される方向も踏まえ、中身を見られても説明できる請求にしておきます。審査の動きそのものは、関連記事にまとめています。
よくある質問
出典
- 厚生労働省「柔道整復療養費のオンライン請求導入等について(中間とりまとめ)」令和7年3月12日(審査のコンピュータ化、多部位・長期・頻回や施術所単位の傾向審査の方向) mhlw.go.jp/content/12601000/001467878.pdf (2026年6月確認)
- 厚生労働省「柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて」(療養費の支給対象・申請の取扱い。負傷原因や部位の記載に関わる) mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/jyuudou/ (2026年6月確認)
返戻の理由や審査の運用は、保険者や時期によって異なります。実際の請求の判断は、厚生労働省の最新情報、所属団体、保険者の案内でも確認してください。本記事は返戻を減らすための考え方をまとめたものです。