可視化の目的は、宣伝でなく患者の納得
施術の効果を見せたいと考えるとき、まず置いておきたいのは、何のために見せるのかです。目的は、来院した患者に状態を分かってもらい、納得して通ってもらうことです。外から客を呼ぶための宣伝ではありません。ここを取り違えると、見せ方が広告の領域に踏み込み、規制に触れます。
エコーで患部の経過を画面に出すのは、この納得を作る場面で効きます。腫れの引き具合や状態の変化を、言葉だけでなく画面で見せると、患者は自分の体に何が起きているかをのみ込みやすくなります。ただし、見せていいのは来院した患者への説明までで、その画面を広告に出すのは別の話です。順に、院内での見せ方、前回との比較、広告の線引き、使わない言葉を確かめます。
院内で効果を見せる 画面で経過を共有する
柔道整復師がエコーを使うこと自体は、関係法令に反しません。厚生労働省は、施術に関わる判断の参考とする超音波検査について、施術所で実施しても関係法令に反しないという見解を、通知(平成15年9月9日)と事務連絡(平成22年12月15日)で示しています。来院した患者への説明で使えるのは、おもに次の場面です。
- 患部の腫れや状態を画面に出し、患者と一緒に見ながら、いまどういう状態かを伝える。
- 施術の前後で見える範囲の変化を、画面で確かめながら、通院や施術の必要性を説明する。
- 患者が気にしている部位を画面で示し、なぜその施術をするのかを、目で見て分かる形で伝える。
患者は、言葉で「よくなっています」と言われるより、自分の患部を画面で見たほうが納得しやすくなります。この納得が、途中でやめずに通うかどうかを左右します。効果の可視化のいちばんの値打ちは、この院内での説明にあります。なお、画面を見て「骨折です」「炎症です」と診断することはできません。診断は医師の業務です。見せるのは観察と説明までで、ここを越えると医師法に触れます。
前回との比較で、経過を伝える
経過を伝えるときに分かりやすいのは、前回の画面と今回の画面を並べて見せる形です。腫れがどう変わったか、状態がどう動いたかを、同じ部位で見比べると、患者は変化を自分の目で確かめられます。口で「よくなっています」と言うより、納得が深まります。
ただし、この比較はあくまで院内で、来院した患者に見せるものです。「これだけ変わりました」という前後の画面を、効果の証拠として広告やホームページに出すことはできません。同じ画像でも、目の前の患者に説明として見せるのと、外に向けて打ち出すのとでは、扱いが分かれます。比較で経過を伝える工夫は、院内の説明の中で活かします。
広告・HP・SNSに出すときの線引き
院内で見せるのとは反対に、広告に出せるものは法律で限られています。柔道整復の広告は、広告できる事項が限定して並べられていて、効果効能や施術方法、専門性はそこに含まれません。施術の効果、エコーの画面を使ったビフォーアフター、患者の体験談は、広告に出せません。令和7年2月に出たあはき・柔整広告ガイドラインでも、考え方は同じです。違反は30万円以下の罰金です。
ホームページやSNSがどこまで広告にあたるかは、媒体や打ち出し方によって変わります。来院した患者に院内で見せる説明と、不特定の人に向けた打ち出しでは、扱いが分かれます。判断に迷う見せ方は、自分だけで決めず、所属する団体や保健所に確認しながら進めます。効果を見せる工夫は、外への広告ではなく、来院した患者への院内の説明に寄せると、線を越えずに済みます。
「治る」「改善率」を書かない理由
見せ方とあわせて気をつけたいのが、使う言葉です。「治る」「○%改善」「効果が出ます」といった、効果を保証したり誇張したりする言い方は使いません。こうした表現は、薬機法や景品表示法に触れるおそれがあり、柔道整復の広告でも出せない効果効能にあたります。画面で経過を見せられるからこそ、言葉のほうは抑えます。
院内で患者に説明するときも、断定はしません。「この施術で治ります」ではなく、画面で見える状態の変化を、事実として一緒に確かめる言い方にとどめます。数字で効果を約束するような見せ方は、院内でも広告でも避けます。可視化は、効果を売り込むためではなく、いまの状態を正しく伝えて納得してもらうための道具だからです。
やること(院内)/やらないこと(広告)
効果の可視化は、院内でやることと、広告でやらないことを分けて押さえると、迷わずに済みます。
やること(院内)
- 来院した患者へ、患部の腫れや状態を画面で一緒に見て、いまの状態を伝える。
- 前回の画面と並べて、見える範囲の経過を、患者の目で確かめてもらう。
- 説明の言葉は、断定や誇張を避け、画面で見える事実にとどめる。
やらないこと(広告)
- 効果・ビフォーアフター・体験談を、広告やホームページ、SNSに出すこと。
- 「治る」「改善率○%」など、効果を保証する言い方や誇大な表現を使うこと。
- 画面を見て「骨折です」と診断すること。骨折や脱臼の疑いは医師へつなぐ。
効果の可視化は、来院した患者の納得を深めるための道具です。集患の広告でも、効果を売り込む宣伝でもありません。院内で見せる説明と、外への広告を分けて、判断に迷う見せ方は団体や保健所に確認します。エコーの導入そのものを迷っているなら、何ができて何ができないかを先に確かめます。
よくある質問
出典
- 京都府/厚生労働省「柔道整復師による超音波画像診断装置の使用について(注意喚起)」平成29年9月29日(施術に関わる判断の参考とする超音波検査の取扱い、診断にあたる行為をしないよう注意喚起。平成15年9月9日通知・平成22年12月15日事務連絡を含む) pref.kyoto.jp/iryo/documents/290929.pdf (2026年6月確認)
- 柔道整復師法(昭和45年法律第19号)第17条(施術の制限=医師の同意がなければ脱臼・骨折の患部に施術不可、応急手当を除く)・第24条(広告の制限=広告できる事項の限定列挙) laws.e-gov.go.jp/law/345AC1000000019 (2026年6月確認)
- 厚生労働省「あはき・柔整広告ガイドライン(あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう、柔道整復の広告し得る事項等及び広告適正化の指針)」令和7年2月18日(施術方法・専門性・効果効能・ビフォーアフター・体験談は広告できない、違反は30万円以下の罰金) mhlw.go.jp/content/10800000/001412682.pdf (2026年6月確認)
本記事は、施術の効果をどう見せるかを考えるときの整理です。エコーの取扱い・広告・効果の表現に関する要件は変わることがあります。実際の判断は、厚生労働省の最新情報、所属する団体、保健所にも確認してください。特定の製品の宣伝ではありません。