柔整師は、骨折・脱臼の応急手当ができる

柔道整復師法は、医師の同意を得た場合のほかは、脱臼または骨折の患部に施術をしてはならないと定めています。ただし、応急手当をする場合は別です。つまり、骨折・脱臼の応急手当は、柔道整復師が医師の同意なしにできる、数少ない場面です。

応急手当は、骨折または脱臼の場合に、医師の診療を受けるまで放置すると生命や身体に重大な危害のおそれがあるとき、業務の範囲内で患部を一応整復する処置です。受傷直後に患者が来院し、医師にかかるまでに時間があるときの、その場の手当てです。打撲・捻挫・挫傷は医師の同意なしに施術できますが、骨折と脱臼はこの応急手当の範囲が線になります。

応急手当の場面で、エコーは観察の参考になる

柔道整復師が施術に関わる判断の参考とする超音波検査は、施術所で実施しても関係法令に反しないと、厚生労働省の通知(平成15年9月9日)と事務連絡(平成22年12月15日)で示されています。受傷直後の場面では、エコーは次のように使えます。

  • 患部の状態を画面で観察し、応急手当をするかどうかの判断の参考にする。
  • 骨折や脱臼の疑いを観察し、すぐに医師へつなぐかどうかを考える材料にする。
  • 患者や付き添いに、患部の状態を見せて、医師へかかる必要性を伝える。

受傷直後は、患者も不安です。画面で患部を一緒に見ながら、これから医師にかかる流れを伝えると、納得して動いてもらいやすくなります。エコーは、その場の判断と、患者への説明を助けます。

エコーで「診断」はしない

大事な線引きがあります。エコーで患部を観察できても、柔道整復師が「骨折しています」と診断することはできません。診断は医師の業務です。厚生労働省も平成29年に、超音波画像診断装置の使用について、診断にあたる行為をしないよう注意喚起しています。

観察して骨折や脱臼の疑いを感じたら、自分で病名を判断するのではなく、応急手当をしたうえで医師へつなぎます。エコーは、患部を観察して医師へつなぐ判断と、患者への説明に使う道具です。画像で診断する道具ではありません。この線を越えると、医師法に触れます。

整復のあとは、医師の同意がいる

応急手当は、その場の処置です。医師の同意なしにできますが、整復したあとに引き続き施術をする段階では、医師の同意を得てからにします。応急手当でいったん整えたから、そのまま自院で通院施術を続けてよい、とはなりません。

応急手当と、その後の施術は別 骨折・脱臼の患部の施術は、医師の同意が前提です。応急手当はその例外として認められた、受傷直後の処置にあたります。整復したあと、骨折・脱臼の患部に施術を続けるなら、医師の同意を得ます。打撲・捻挫・挫傷とは扱いが違う点を、受傷直後の判断に組み込んでおきます。

受傷直後の流れを、平時に決めておく

受傷直後は、迷っている時間がありません。だから、流れを平時に決めておきます。観察して、応急手当をして、医師へつなぐ。この順番と、つなぐ先の医師を、あらかじめ用意しておくと、その場で動けます。

つなぐ先は、近隣の整形外科などです。平時に紹介のルートを作り、患者の状態や応急手当の内容を伝えられるようにしておきます。エコーで観察した患部の様子も、医師に状況を伝える材料になります。連携の作り方は、関連記事で扱います。

その場でやること、やらないこと

受傷直後は、できることとできないことを、迷わず分けます。

その場でやる

  • 患部をエコーで観察し、応急手当をするか、すぐ医師へつなぐかの判断の参考にする。
  • 骨折・脱臼の疑いがあれば、応急手当をしたうえで医師へつなぐ。
  • 患者へ患部の状態を見せ、医師へかかる流れを伝える。

やらない

  • エコー画像で「骨折です」と診断すること。診断は医師の業務。
  • 応急手当のあと、医師の同意を得ないまま、骨折・脱臼の患部に施術を続けること。
  • エコーがあるからと、医師への受診を省くこと。

骨折・脱臼の応急手当は、柔道整復師に認められた大切な場面です。エコーは、その場の観察と、患者への説明、そして医師へ安全につなぐ判断を助けます。診断の道具ではなく、受診を省く道具でもありません。範囲を守って使えば、受傷直後の対応が落ち着きます。

よくある質問

柔道整復師は、骨折や脱臼に手を出してよいのですか?
応急手当はできます。柔道整復師法は、医師の同意を得た場合のほかは脱臼または骨折の患部に施術をしてはならないと定めていますが、応急手当をする場合は別とされています。医師の診療を受けるまで放置すると生命や身体に重大な危害のおそれがあるとき、患部を一応整復するのが応急手当です。ただし、整復したあとに施術を続けるには、医師の同意が要ります。
応急手当の場面で、エコーを使ってもいいですか?
使えます。柔道整復師が施術に関わる判断の参考とする超音波検査は、施術所で実施しても関係法令に反しないと、厚生労働省の通知と事務連絡で示されています。受傷した直後に患部の状態を観察し、応急手当や医師へつなぐ判断の参考にできます。ただし、これは観察と判断の参考までで、診断ではありません。
エコーで骨折を確認したら、自分で診断してよいですか?
できません。診断は医師の業務です。柔道整復師は、超音波画像を見て患部を観察し、施術に関わる判断の参考にできますが、画像から「骨折です」と診断してはいけません。観察して骨折や脱臼の疑いがあれば、応急手当をしたうえで、医師へつなぎます。厚生労働省も平成29年に、診断にあたる行為をしないよう注意喚起しています。
応急手当をしたあと、そのまま通院させてよいですか?
骨折や脱臼の患部の施術を続けるには、医師の同意が要ります。応急手当はその場の処置で、医師の同意なしにできますが、整復したあとに引き続き施術をする段階では、医師の同意を得てからにします。打撲や捻挫、挫傷は医師の同意なしに施術できますが、骨折と脱臼は扱いが違う点に気をつけます。
エコーがあれば、医師に行かなくてよくなりますか?
なりません。エコーは観察と判断の参考であって、診断や治療の代わりにはなりません。骨折や脱臼の疑いがあれば、エコーがあってもなくても、医師へつなぎます。エコーは、医師へつなぐ判断を助け、患者へ状態を説明するための道具です。受診を省くための道具ではありません。

出典

SOURCES | 一次情報
  1. 京都府/厚生労働省「柔道整復師による超音波画像診断装置の使用について(注意喚起)」平成29年9月29日(施術に関わる判断の参考とする超音波検査の取扱い、診断にあたる行為をしないよう注意喚起。平成15年9月9日通知・平成22年12月15日事務連絡を含む) pref.kyoto.jp/iryo/documents/290929.pdf (2026年6月確認)
  2. 柔道整復師法(昭和45年法律第19号)第17条(施術の制限=医師の同意がなければ脱臼・骨折の患部に施術してはならない、応急手当を除く) laws.e-gov.go.jp/law/345AC1000000019 (2026年6月確認)
  3. 厚生労働省「あん摩、はり、きゅう、柔道整復等営業法の疑義に関する件」昭和23年6月17日 医第123号(応急の手当=医師の診療を受けるまで放置すれば生命・身体に重大な危害のおそれがある場合に、業務の範囲内で患部を一応整復する行為) mhlw.go.jp/web/t_doc(医第123号) (2026年6月確認)

本記事は、骨折・脱臼の応急手当とエコーの使いどころを整理したものです。業務範囲やエコーの取扱いは変わることがあります。実際の判断は、厚生労働省の最新情報、所属する団体、連携する医師にも確認してください。特定の製品の宣伝ではありません。

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