採れない背景 有資格者の取り合い
求人を出しても来ないとき、まず自分の出し方を疑いがちです。ただ、その前に背景を見ておきます。柔道整復師が働く施術所は、増え続けています。厚生労働省の衛生行政報告例では、施術所の数は約5万を超え、増える傾向が続いています。働く場所が増えれば、一人の有資格者を、いくつもの院が同時に探すことになります。
つまり、採れないのは出し方が下手だからとは限らず、取り合いになっているからです。背景がこうである以上、ほかの院と同じ出し方をしていては選ばれにくい、と分かります。だから、変えるところは二つです。何を伝えるか。そして、どこで出会うか。順に見ていきます。
出す数より、何を伝えるかを変える
採れないと、つい求人を出す回数や媒体を増やしたくなります。ただ、同じ内容を多く出しても、並んだときに埋もれる事情は変わりません。先に変えたいのは中身です。多くの求人は、給与・休日・勤務時間といった条件が並びます。条件はもちろん必要ですが、それだけでは、ほかの院との違いが伝わりません。
応募を考える柔整師が本当に知りたいのは、入ってからの毎日と、その先です。ここで何を学べるのか。どんな働き方ができるのか。数年後に、自分はどうなれるのか。この三つを、テンプレートの言葉ではなく、自分の院の実際の様子で書きます。たとえば、誰がどう教えるのか、勉強会や症例の共有があるのか、将来は分院や独立をどう考えているのか。読んだ人が、入った後の自分を思い描けることが、選ばれる入り口になります。
給与だけで勝とうとしない
採れないとき、給与を上げれば解決するように見えます。給与は大事です。ただ、上げ続けて勝とうとすると、利益を削りながらの消耗になりやすく、より高く出す院が現れれば、また抜かれます。いくらが適切かは、地域や役割、自院の利益構造によって変わるので、ここでは特定の金額を出しません。
給与で各院が並んだとき、最後に効くのは、前の見出しで挙げた中身です。学べる環境、無理のない働き方、先のキャリアの見え方。同じくらいの条件なら、人は、入った後に育てる気のある院や、長く働けそうな院を選びます。給与は土俵に乗るための条件、中身は選ばれるための理由、と分けて考えます。賃金の決め方や、求人で示す労働条件の明示の仕方は、社会保険労務士に確認します。
採用経路を、媒体の外にも広げる
伝える中身を整えたら、次は出会う場所です。求人媒体は届く範囲が広い一方、同じ場所にほかの院も並びます。媒体だけに頼らず、経路を広げます。中立の立場として、特定の求人媒体や紹介会社をすすめることはしません。考え方として、経路にはいくつかの種類があります。
- 養成校との関係。柔道整復師を養成する学校とのつながりをつくり、実習や見学、職場体験を受け入れる。早い段階で院を知ってもらう経路です。
- 紹介。いま働く人や、知り合いの柔整師からの紹介を頼む。中身を知る人からの紹介は、入った後のズレが起きにくい経路です。
- 自院の発信。院のサイトやSNSで、日々の仕事や考え方、患者との向き合い方を発信する。求人を出す前から、院のことが伝わっている状態をつくります。
どれが正解というより、自分の院に合うものを、いくつか組み合わせて使います。媒体で広く知らせつつ、発信で中身を見せ、紹介でつなぐ、といった重ね方です。経路ごとに、誰に何を伝えるかは少しずつ変わります。
採って終わりにしない
採用がうまくいき始めても、そこで終わりではありません。採用と定着は、セットで考えます。せっかく入った人が早く辞めてしまうと、また同じ採用をくり返すことになり、取り合いの中でさらに苦しくなります。採用にかけた手間とお金も、繰り返すたびに重くなります。
定着で問われるのは、採用のときに伝えた中身を、入ってから本当に用意できているかです。学べると書いたのに教える人も時間もない、働きやすいと書いたのにシフトが回らない、となれば、早く離れます。伝えた中身と、実際の毎日をそろえることが、定着の土台です。シフトや勤怠を無理なく回す方法や、教える順番の決め方など、定着の進め方は別の記事で詳しく扱います。採用は、その入り口です。
先にやること/まだやらないこと
採れないときほど、手を広げる前に、順番を決めます。
先にやる
- いまの求人を読み直し、学べる環境・働き方・先のキャリアを、自分の院の実例で書き足す。
- 媒体のほかに使える経路(養成校・紹介・自院の発信)を書き出し、合うものを選んで動き始める。
- 採用のときに伝える中身を、入ってから本当に用意できるか、定着の側から確かめる。
- 給与や労働条件の明示など、雇う側の決まりは社会保険労務士に確認する。
まだやらない
- 中身を変えないまま、出す媒体や回数だけを増やすこと。
- 勝つ手立てを給与の上げ合いだけに絞ること。利益を削りながらの消耗になりやすい。
- 定着の用意がないまま、採用の人数だけを追うこと。早期離職でくり返しになる。
採れない背景は、施術所が増えての取り合いです。背景は一院では変えられませんが、何を伝えるか、どこで出会うか、入った後をどうそろえるかは、自分で変えられます。出す数を増やす前に中身を書き直し、経路を広げ、定着とセットで設計する。この順で動けば、同じ取り合いの中でも、選ばれる側に回りやすくなります。
よくある質問
出典
- 厚生労働省 衛生行政報告例(就業医療関係者・施術所数。柔道整復の施術所は約5万を超え増加傾向) mhlw.go.jp/toukei/list/36-19.html (2026年6月確認)
- 厚生労働省(労働時間の適正な把握・年5日の年次有給休暇など、雇う側の労務の決まり。求人での労働条件の明示を含め、個別の判断は社会保険労務士に確認) mhlw.go.jp (2026年6月確認)
- 柔道整復師法(昭和45年法律第19号。柔道整復師の資格・施術所に関する法律) laws.e-gov.go.jp/law/345AC1000000019 (2026年6月確認)
本記事は、柔整師の採用で何を変えるかを整理したものです。施術所数や市場の状況は変わることがあります。給与の決め方、求人での労働条件の明示、雇用にともなう手続きなど、雇う側の決まりは、社会保険労務士に確認してください。特定の求人媒体・人材紹介会社をすすめるものではありません。